【凍】 沢木耕太郎 新潮文庫
2018.06.30ブログ今年は、エベレストで、登山家の栗城史多さんが亡くなられ、ニュースでも報道されました。
毎年たくさんの登山家が雪崩や遭難で命を落としています。
それでも、世界のアルピニストはより困難な山を、より困難なルートで、より困難な条件で登頂するため、何度もアタックしています。
そんな登山家の考え方や価値観に興味を持ち(私は絶対にやろうとは思いませんが)、今年は登山家の本やドキュメンタリー番組をたくさん読み漁りました。
そんな中で衝撃を受けた一冊が、沢木耕太郎さんの「凍」です。
彼の作品の中ではベストではないでしょうか。
世界的クライマーの山野井泰史・妙子夫妻のヒマラヤの難峰ギャチュンカン北壁の登頂とその下山での出来事を記したノンフィクションです。
標高7000メートル。登山家からは、「死のゾーン」と呼ばれている。
酸素濃度は通常の3分の1。零下30度の極寒。ほとんど垂直の氷壁を、山野井夫妻は、ロープのみでつながれたまま、下っていた。そこで夫婦は、雪崩に巻き込まれ、妻妙子は落下する。
妻妙子は宙ずり状態。夫泰史は、下にいる妙子は生きているかわからない。ロープが切れると、妻妙子は、数千メートル下の氷河に叩きつけられる。夫泰史は妻の救出に向かう。
夫泰史も、雪崩のために視力を失ってしまう。手探りで岩の割れ目を探して下りるしかない。
分厚い手袋のためこれでは割れ目を探せない。泰史は決断する。手袋を外し、今後日常生活で一番使わないであろう左の小指を用いて、割れ目を探す。小指が凍傷でだめになると、次は右手の小指。次は左の薬指…。どんどん、指が死んでいく。割れ目を見つけて、ハーケンを1回打つのに1時間くらいかかったという。圧巻の迫力と臨場感。
読了後、自分の仕事のしんどさや悩みが何かちっぽけに思えて晴れ晴れしい気持ちになりました。お勧めです。