「○」が付きますように。
2017.04.07ブログ趣味の話を。私の趣味は読書です。
今後読んだ本を定期的に記録していこうと思います。
今日の本は、元裁判官木谷明さんが書かれた本「『無罪』を見抜く」(岩波書店)です。
木谷さんは、主に刑事裁判官をつとめられており、30件以上の無罪判決をだし、すべて確定しています。
そんな木谷さんの生い立ちから裁判官生活までのヒストリーを一冊にまとめたものがこの本です。
上司の裁判官の評価などが本音で赤裸々に書かれており、正直ここまで書くかと驚きました。
私が印象に残っているのは、木谷さんが、最高裁調査官時代の話です。
最高裁には、全国から上告案件が、寄せられます。大量の記録が最高裁判所に押し寄せるわけです。私は、このような大量の案件をどのようにして処理していているのか不思議に思っていました。
この本では、刑事事件の上告案件の処理の流れも隠すことなく出てきます。最初に事案の粗選別が行われます。
弁護人(被告人)が作成した上告趣意書(上告の理由を記載した書面)をもとに、「×」「△」「○」「◎」の4段階に分けられます。
①事実誤認を主張している事件は、基本的には最高裁では取り上げないことになるので「×」
②量刑不当だけしか主張していない事件は、最高裁ではほとんど相手にされないから「△」
憲法違反など色々言っていても、結局量刑不当に帰着する事件も「△」
③重要な法律問題を含んでいる事件や判例になりそうな事件、あるいは事実認定でもかなり微妙と思われる事件は「○」
④超特大の事件や極めて難しい法律問題を含んだ事件には「◎」
そして、つけられた符号の種類に従って、その後、担当調査官→裁判官の順番で配点されることになるそうです。
とすると、最初の粗選別の分類が非常に重要な意味を持つことがわかります。そしてその帰趨を決めるのが、一本の上告趣意書であることがわかります。いかに上告趣意書が重要であるかがわかる話でした。
現在上告趣意書を提出し、結果待ちの事件があり、(現在も当時と同じ手法がとられているならば)今頃上告趣意書に「大きな○印」がついていることを祈るこの頃です。